第13号 2017.02 創刊1周年特別号

院長のとっておきの話

より良い未来のために良い習慣を

田端駅前クリニック 院長 青木 竜弥
田端駅前クリニック
院長 青木 竜弥

「Oasis Heart」創刊1周年を迎えて

「Oasis Heart」は、おかげさまで1周年を迎えることができました。継続は力なりといいますが、有り難いことに周囲の方々から色々なコメントをいただく機会も増えました。

患者さんの疑問や不安を軽減できるよう、これからも有益な情報を提供していきたいと思います。

透析はもう生活の一部

透析医療は通常の医療とは少し異なり、患者さんは週3回以 上通院することを余儀なくされています。月1回の外来診察なら 時間はかかっても2時間ほどで終わりますが、血液透析では週3回、1回4時間以上病院にいて治療を受けています。これはよく考えると凄いことで、週のうち12時間(7%強)もの時間を透析に費やしているのです。仕事、睡眠に次ぐ長さではないでしょうか。そんな医療は血液透析以外には見当たりません。

それだけに、患者さんには不思議な感覚があると思います。日常生活の中に病院が組み込まれていて、通院しているというより、通学?通勤?といいった感覚が少なからずあるのではないでしょうか。

大切な習慣

そうなると透析も完全に日常生活の一部と化してきます。これはある程度仕方のないことですが、慣れてきてしまうのです。習慣は怖いもので、それが当たり前になってきてしまいます。良い習慣であればいいのですが、悪しき習慣だとそこを修正するのが難しくなってきます。

体重コントロール、水分制限、塩分制限、カリウム・リン制限など、透析患者さんには色々な制限がかかってきます。患者さんを制限でがんじがらめにするつもりはありませんが、バランスはとってもらいたいのです。

「今日飲みすぎちゃったから次回は抑えよう」「昨日食べ過ぎたから今日は少し軽めにしよう」といったことからでもいいと思いま す。まずは意識をすることが大事なので、自分の体や行動に意識を持っていただきたいのです。その積み重ねが習慣となり、より良い生活に反映されてくると信じいります。

より良い未来のために協力を

透析医療は医療者と患者さんの共同作業で成り立っており、 どちらか一方だけでは十分な効果や結果は得られません。しかし、両方が満たされていれば、その利益はあなた自身に戻ってくるのです。

これは、ご自身の未来はある程度ご自身でコントロールできるということです。もちろん、予期せぬことは起こりえますが、そのリスクをコントロールすることは可能です。より良い未来を築くためにはご自身と医療者双方の理解と協力が不可欠です。
(田端駅前クリニック 院長 青木 竜弥)

今さら聞けないFAQ⑩

患者さんの素朴な質問にお答えします

質問1)透析治療って、何をしているのですか。

血液透析のイメージ図
(出典:一般社団法人全国腎臓病協議会HPより)

透析療法には血液透析と腹膜透析があります。

どちらも体内にたまった尿毒素や老廃物の排泄、電解質や酸性・アルカリ性のバランス維持、体液量の調節を行い血液をきれいにします。血液透析は人工腎臓の機械を使い、腹膜透析は自分の腹膜を用いて透析を行います。

血液透析をもう少し詳しく説明します。血液を一度体の外に出し、ダイアライザー(透析器)という装置の中を通し、再び体内に戻します。ダイアライザーの中には、数万本の細いストローのような糸が通っていて、血液はその糸にある細い穴の中を通ります。糸の外には、透析液が、血液とは反対方向に流れています。透析膜にはnm(ナノ㍍=10億分の1㍍)単位の非常に小さな穴があいていて、血液と透析液の中の成分が出たり入ったりできるようになっていますが、この穴は分子の小さなものしか通しません。血液がダイアライザーを通過するとき、血液の中の老廃物や余分な電解質は透析液の中に出ていきます。

一方、透析液の中から体外に失われた水分や不足している電解質が血液の中に入り、血液の酸・アルカリバランスが中性になるように調整されます。このようにして浄化された血液を再び体内に戻します。

質問2)透析を始めてから汗をかかななりました。透析治療と関係がありますか。

正確な理由は分かっていませんが、関係していることもあります。「汗をかく」ためには、体外的条件、体内的条件があります。対外的な条件としては、汗腺の問題があります。なぜ、透析患者は汗が出なくなるかはまだよく分かっていないのですが、何らかの原因で汗腺が委縮したり、機能が低下していると考えられています。

一方、体内的な条件では原疾患や、年齢、生活環境、透析条件等で変わってきますが、透析により体内の水分を除去しており、汗をかきづらい状態になっています。

質問3)透析を始めてから便秘がちです。関係はありますか。

はい。関係しています。透析患者さんは、厳しい水分制限と透析による除水により便の構成成分である水分が少なくなることで便秘になりやすくなります。

また、透析患者さんでは、体内のリンやカリウムの排出もできにくくなり、過剰になると悪影響が出るため制限していますね。便秘はそれとも関係があり、リンの場合、患者さんはリン吸着剤を服用しますが、この影響で便秘を起こすこともあります。

一方、便秘予防には食物繊維の多い野菜や果物を多く摂りたいところですが、どちらもカリウムを多く含んでおり、摂取量を増やせないことも挙げられます。

リンもカリウムも食事と直結する重要なテーマですので、質問6・7で詳しく説明します。

質問4)透析を始めたら、夜眠れません。どうしたらよいですか。

「猫・長谷川潾二郎」
「猫・長谷川潾二郎」
片方の髭を描けぬままに

透析患者さんが不眠を起こす原因としては以下のようなものが挙げられます。

  1. 身体的要因:皮膚の痒み、むずむず脚症候群によるイライラ感、睡眠時無呼吸症候群による日中の眠気などが挙げられます。
  2. 生理的要因:透析中に必要以上に睡眠をとることで睡眠バランスを崩して夜間眠れなくなります。
  3. 心理的要因:ストレスやショック、不安が原因で起こる不眠
  4. 精神医学的要因:うつ病や統合失調症などの精神疾患が原因で起こる不眠
  5. 薬理学的要因:アルコール、タバコ、コーヒー、内服中の薬が原因で起こる不眠。特に身体的要因は治療により改善しますので主治医の先生とよく相談してください。

質問5)夏と冬とでは飲水量を変えた方がよいですか。

はい。でも注意が必要です。

夏場は汗をかきますので、冬場に比べて少し水分を多めにとってもよいですが、取りすぎは禁物です。その差は体格や年齢、性別によって変わってきますが、せいぜい200ml程度でしょう。

質問6)P(リン)って、何ですか。体に溜まるとよくないのですか。

質問3で少し触れたように、食事と直結するため、とても大切なことです。

リンは蛋白質を多く含む肉、小魚、卵、乳製品、豆類などに多く含まれています。また、保存料としてリン酸を添加しているもの、例えば魚肉加工品(かまぼこ、はんぺん、魚肉ソーセージ)やインスタント食品、ベーコン、ハム、ソーセージ、冷凍ハンバーグなどに多く含まれています。

リンは生物が生きるのに欠かせないミネラルの一つで、骨や歯を造るのに必要な成分です。また、細胞がエネルギーを産生することにも関わっています。

生体内では、過剰なリンはさまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。高リン血症はカルシウムとリンが結合し骨以外のいろいろな組織に沈着し、異所性石灰化を引き起こします。血管に沈着すると動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞を引き起こし、関節ですと関節炎、皮膚だとかゆみの原因になったりします。

さらに高リン血症はビタミンDの産生低下を引き起こし、副甲状腺からPTHというホルモンを過剰に産生させます。PTHは骨を溶かし、その結果、骨がもろくなり骨折や骨痛を生じます。

このように過剰なリンは百害あって一利なしなのです。リンは普通の食事をしている限り不足することはまずありません。必要以上に体内に溜まらないようにすることが重要です。

質問7)K(カリウム)が体の中で増えると何が悪いのですか。

カリウムが高値になると神経や筋肉の機能に異常が生じます。

体を動かせという脳からの命令がうまく神経に伝達できなくなるため力が入らなくなったり、触覚、痛覚などの感覚がうまく脳に伝わらなくなったりします。また心臓の規則正しい電気的刺激が阻害されて重篤な不整脈を起こし、心停止を起こす危険性もあります。目標値は透析前の採血で5.5mEq/L以下です。

カリウムの多い食品として果物、生野菜、豆類、海草、ドライフルーツなどが挙げられます。カリウムを減らす調理法として、カリウムは水に溶けやすいため、細かく切って水にふれる表面積を増やし、ゆでて、ゆで汁を切ることで50%ほど減らすことができます。

質問8)なぜ、透析前に体重を測るのですか。

透析治療の目的の一つに除水があります。透析前に体重を測定するのは、その除水量を設定するためです。

透析前の体重を測ることで、前回の透析終了からの増加体重を計算し、除水量を決めます。そのとき目標とする体重をDW(ドライウエイト)といいます。毎回の透析は設定されたDWまで戻すことを目標とするため、1回の透析における除水量の目安は、透析前体重からDWを差し引いた値となります。

質問9)体重測定の時に、どうして飲水や食事も一緒に測定するのですか。

透析中に飲水や食事をとられる方も多いと思います。摂取したものは体に吸収されますので、その分も除水量としてカウントし引かないと増えた体重を残したまま目標のDWまで戻せないことになります。

厳密に吸収された摂取量を測定することは困難であり、お弁当や飲み物の重さを測ることでおおよその摂取量を把握し除水量に反映させています。

質問10)透析中なら、お煎餅を食べても大丈夫ですか。

美味しそうですが、これは多すぎますね

召し上がる時は、量と食べ方に注意しましょう。

透析中に食事をすると、消化管に血液が集まり循環血液量が減少し血圧が下がりやすくなります。加えて、食事を摂取するために座位になることも血圧が下がりやすい状況を作ることにつながります。

また、食事中の栄養素が吸収されるには、30分~2時間程度の時間がかかると言われています。

したがって、血圧が低下しやすい状況と食事中のカリウムやリンの除去の両方を考慮すれば、一般的な4~5時間透析の場合は、透析の前半に食べる方が望ましいと考えられます。

お煎餅には塩分、カリウムも含まれていますが、1~2枚であれば問題ありません。透析前半に数枚摂取するくらいがいいでしょう。

ファッションの無限大の可能性
ファッション界のイノベーター

ファッションデザイナー鶴田能史さんを囲んで

鶴田能史さんを囲んで
2017/01/24 医療法人Oasis Medical ラボにて。
患者さんから素晴らしい笑顔を引き出す、ファッションの無限の可能性について熱い想いを語る

鶴田 能史(つるた・たかふみ)さん

2003年 文化服装学院デザイン専攻を卒業、コシノヒロコに師事 その後、子供服ODM会社
2011年 昭和学院短期大学講師。舞台衣装デザインミュージシャンの衣装デザインなど幅広く活動
2012年 JVCケンウッド・デザインイベント協力
2015年 1月テンボデザイン事務所「tenbo」設立/ 3月 Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2015 A/W / 8月 ロンドン/ ミスブリティッシュエンパイア衣装部門入賞/ 10月 Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2016 S/S / 同月 スポーツオブハート2015障害者スポーツ・ファッションショー衣装デザイン担当/ 11月 チャレンジドフェスティバル2015 ファッションショー開催/同月 超福祉展2015 登壇『臓器のデザイン』発表
2016年 1月 ミスツーリズムワールド日本と中国代表衣装担当衣装部門2位 /同月 レディユニバース(ブルガリア世界大会)日本代表衣装担当衣装部門グランプリ/ 2月 SONY本社フューチャーセッション 『ファッション細胞』提言/ 10月バリコレ2016(六本木ヒルズアリーナ)、スポーツオブハート2016、2017SS 東京コレクション(表参道ヒルズ)

思いっきりの笑顔のために

本日はテレビを始め多くのメディアで紹介され、多忙を極めるファッションデザイナー、鶴田能史さんにお越しいただきました。

鶴田さんの動画を拝見して驚いたのは、鶴田さんのファッションで患者さんが元気になっていくことです。最初はファッションと医療の関係性にあまり気づいていなかったのですが…、本当に驚きました。我々は透析医療の世界でイノベーションを起こしたいと頑張っていますが、鶴田さんはファッションでイノベーションをおこしておられ、大きな共通点があるように思いました。

では、鶴田さんよろしくお願いいたします。

「テンボ・tenbo」世の中すべての人にファッションを

tenbo

私たちテンボは、ファッションに関わることすべてを手がけています。世の中すべての人にファッションを、ということを目的にしているのです。まず、「テンボ」のロゴマークですけれど…これはドクロをモチーフにしています。ドクロに黒眼鏡、唇はハートです。

ドクロはすべての人、動物にもありますよね。

どうして知ってもらえないのだろうかといってもダメで、どうしたら知ってもらえるのかというふうに、こちらが歩み寄っていかなければいけない。多くの人の身近なところにある、そういったところからこのロゴをデザインしています。

すべてを対象にする、すべての人を受け止めるファッション、障害や病気の有無、年齢・性別や国籍にかかわらずすべての人に好まれる、使いやすい、笑顔あふれるあたたかい、優しさあふれる綺麗な、そして平和を願うデザインを目指しているのです。

平和を願い差別をなくす千羽鶴のドレス

千羽鶴のドレス

まずは広島市に提案をして受け入れられた、千羽鶴で作ったドレスを見ていただきましょう。

世界平和が大きなテーマになりますが、このドレスを纏ったモデルに注目してもらいたいのです。私はあえて黒人を起用したのです。そう、ファッション業界では黒人はタブーとされていてほとんどが白人のモデルです。こうして差別の問題を意識させようとしています。

みんなが讃えたハンセン病の元患者さん

昨年10月に開催したファッションショー「2017SS東京コレクション」では、ハンセン病の元患者さんが主役(モデル)となりました。昔は、ハンセン病が疑われただけで、存在を否定されたかのように社会から隔離された生活を余儀なくされました。子供を生むことも許されませんでした。

ハンセン病差別に対する訴えはこれまでもずっと続けられてきましたが、ファッションという切り口で世の中に訴えたのはこれが初めてです。そこに話題性があった。実は現在では、ファッション業界の中にも話題性がなく閉塞しています。つまりこの試みは、双方にとって話題性を提供することに成功したのだと考えています。

もう一つこのファションショーがこれまでと違っていることがありました。通常ファッションショーは、ショーが終われば観客は潮が引くようにさーっと帰っていくのですが、このショーでは、ショーが終わってもみんながモデルのところに集まって祝福し励ましているのです。丁度モデルになっていただいたハンセン病の元患者さんのお誕生日であったこともありますが、みんなの気持ちが繋がった、そういう場になったことが嬉しかった。もちろん、意図してはいたのですが…。

過保護にしない

次のキーワードは病気・障害です(障害を持ちながらモデルになってくれた方たちの写真をまじえながらのお話でした)。

(ポーズを取る青年の写真を紹介しながら)モデルになってくれた、なかなかイケメンの彼は、北海道で障害者でも気軽に立ち寄れるお店を紹介するバリアフリーマップを作成しています。彼自身も10代で脊髄炎を患い、現在は車いすで生活しています。この写真ではベンチに普通に座っていますが、私はまず、彼に立って見てくださいとお願いしました。もちろん、彼は困惑した表情をしました。一人で立つことはできないのです。でも、ありえないことをやってみる。

みんなで四苦八苦してこのポーズをとってもらいました。でもこの写真を見る限り、一般のファッション雑誌に掲載されるモデルと変わりませんね。そう、普通なんです。

みんなの過保護ができない自分を作り、自分自身もそれに甘んじてしまう。病気であっても、障害があっても普通にファッショナブルになれるんです。

積極的に魅せるファッションが生む笑顔の会話

障害を持っていると、見せたくないという気持ちになってしまいがちですが、発想を変えて積極的に見せるという戦略です。この写真の方は義足ですが、義足に大好きなデザインをプリントして義足をアピールする。義足を積極的に見せる服にする。

どの方も笑顔が素晴らしい。この笑顔に着目してください。ファッションは、気持ちを高揚させ、心に響く、優しく温かい笑顔を生み出すことができるのです。その笑顔が、これまで介護に追われていた家族の笑顔を取り戻す。たとえ重度の障害で会話ができなくても、笑顔と笑顔心で会話ができるようになる。私自身も非常に嬉しい経験をしています。

「ファッション細胞」を活性化させる

セレモニーに出席するためにオシャレをする。この高揚感には例えられないものがあります。私はこれを「ファッション細胞」と呼んでいます。この「ファッション細胞」を採取して広げていければいいなと考えています。

この写真の笑顔の女性がモデルに応募してくれた時、脳腫瘍と乳がんですでに余命3カ月の状態でした。彼女自身もご家族など周りのみなさんも口を揃えて、こんな良い笑顔を見たことがないとおっしゃっていました。

これ以降、いろんなイベントに参加してもらいましたが、その間彼女の体調は非常によく、がんの進行も止まっていたと聞きました。そう、ファッションで細胞が活性化したかのように。

臓器にもファッションを

すでに多くの人がカラーコンタクトを使用しているように、これからは臓器にもファッションがあれば良いですね。

例えば、心臓にカラープリントをしてみる。ドクロに金のデザインを施す。

生(生まれる時)はみんな周りを幸せにするが、死ぬときも(お骨になっても)美しくあればなんと楽しいことか。

濁った水を入れ替えろ

ファッション業界は、今はとにかく売れるもの、安いもの、健常者をターゲットに業界が動いており、みんな似たり寄ったりのものになってしまっている。濁った水のような状態です。

この濁った水を綺麗にするにはどうすればよいのでしょう。何回も濾過をすればある程度は綺麗になります。でも、これではまだ飲むことはできません。

私は濁った水を綺麗にするのは相当大変で、全く新しい水に変えてしまうしかないと考えているのです。そう、リセットしてゼロから始めるのです。これが一番効果的なのです。

ロンドンにある子ども病院の写真をみてください。これまでの病院では考えられない楽しい空間ですね。しかし、これまでの考え方では、このような病院を創ることはできません。まず、子どもが楽しい、子どもが輝ける場所を創ろうと思って取り組まないといけない。発想の順番を変えることが必要です。

周りから「いいね!」と言われるものは、実はまだまだ不十分で、「それは非常識だろう、変だろう」と言われれば「合格!」といったところでしょうか。

コミュニケーションするファッション

私の着ている服は点字がデザインされています。触ってみてください、凹凸があるでしょう。実際に点字として機能するのです。現在は、常にコミュニケーションをしているが、触れ合う、手触りや実際のあたたかさを感じるコミュニケーションがなくなってしまった。この服を着ていると、ほら、触ってみて、と言いたくなるし、他の人も触りたくなる。私は、この点字のデザインに失われたコミュニケーションを取り戻したいという思いを込めているのです。

世の中すべての人にファッションを届けたい

私ははじめ、コシノヒロコさんのもとで仕事をしていました。オートクチュール、一着何百万円もするような服を作っていたのです。しかし、実感が湧かないというか、ごく一部の特権階級のために仕事をすることがだんだん虚しくなってきた。

私は人々と身近な関わりを持っていたいと考えていたので、コシノさんからロンドンへ行ってくれないかと頼まれたのをいい機会にやめてしまった。ちょうど中間にいて、上も下もコントロールしたいと考えたのです。

それで、コシノさんのもとを離れた後、私はその対極にある「しまむら」のデザインを手がける会社に入りました。いかに安くしてたくさん売るか、そのことが仕事になりました。そこで学んだこともたくさんあります。例えば、色には売れる色と売れない色があるということ、人の本能に基づく好き嫌いがあって、より多くの人に買ってもらうには、売れる色でデザインしないといけないということでした。

そういったなかで、世の中全体にファションを届けたいと強く思うようになっていったのです。

病人や障害をお持ちの方々のためのファッションは、ご本人たちが本当に素晴らしい笑顔を見せて喜んでくれること、そして、まだ誰もやっていない領域であることから大きなやりがいを感じることができました。また、ニッチでもあったのでビジネスとしてもきっと成立すると確信していました。

唯一無二のデザインを

では、私から質問をさせていただきます。みなさんのクリニックの良いところを上げてください。幾つありますか?

これがいくつあるかが重要なのです。良いところが10個以上あれば、それは唯一無二のものになれる。私はそう考えています。良いということではなく唯一無二です。

私のデザインもそうして作っています。そして10個目にとどめを刺すようなキーになる要素をあげる。例えば、先ほどの点字のようにコミュニケーションができるファッションなどは他では真似ができない。

アイデアは無限大

私が今着ている服の点字についてはお話ししましたが、シャツのボタンはすべてマグネットになっていて簡単に着脱できるようになっています。このネクタイもマグネットで、ネクタイのほか、ご覧のようにホワイトボードのマグネットとしても使えます。

私がアイデアの宝庫としているのが、100円ショップです。本当にさまざまなものがあって興奮します。千羽鶴のスカートにはスプリングを使っていますが、このスプリングも特注なんかではなく100円ショップで見つけたものを転用しています。使えるものは何でも使う。どう使うかがアイデアなんです。

アイデアは必ずしも新しいものである必要はなく、数多く経験して経験の引き出しを多く持つ、その経験を組み合わせて新しいアイデアにする。まさにアイデアは無限大なのです。

我慢を楽しむ

何でも100%満足できるものはない、どこで妥協するか、また妥協すべきかということも重要です。ファッションにはいわゆるファッション性と機能性が求められますが、例えば、オートクチュールが100%ファッション性を追求するものだとすると、ユニクロやしまむらは価格や大衆性も含めた機能性が重要視される。私はファッション性7、機能性3ぐらいの比率でデザインしています。かっこよく見せるためには、着る人にもある程度我慢をしてもらわないといけない。しかし、実はそういう我慢は皆さんできてしまう。

見過ごす力

100%満足できるものはないと申し上げましたが、私はいつも、政治家たちはどうして仲間内で足の引っ張りあいをしているのか?と不思議に思っています。汚職や何か問題があるとすべの審議がストップして追及する。そんなことより本来の社会の問題解決に力を注ぐことのほうが重要だと思うのです。

本当に重要なことに焦点を当てて、それ以外はある意味見過ごしてしまう。そう「見過ごす力」とでもいいましょうか、これも重要です。ゴールにたどり着く道筋は一つではない。100も1000通りもある。それなのに最初の一歩で意見の違う人を排除したり、可能性の芽を摘んでしまうことは本当に残念です。

世の中を変える

ITもそうですけど、新しいものがどんどん投入される。そうすると、最初は慣れないので使い勝手が悪く、クレームがいっぱい出てくる。しかし、それでも使っていると、やはり新しいもののほうが機能性も高く便利だということに気がついて、新しいものにシフトしていく。世の中を変えるというのはこういうことなんじゃないかと考えています。最初は簡単には受け入れられないかもしれないが、ゴールにたどり着く、結果を出すために、自分が力を発揮できる環境を作っていくことが重要なんですね。

私たちOasisも患者さんの生活の質の向上をゴールにさまざまなチャレンジをしていますが、そこに到達するための貴重な示唆を得ることができました。鶴田さんと思いを共有できました。患者さんのためにどんなことができるのか、今後ともディスカッションをさせていただきながら、協力をお願いしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

Voice Special 患者さんの声

患者さんの想いに触れるために

私たちは、“患者さんのために”という想いを胸に、常に努力を続けています。しかしその一方で、その想いや私たちの行動が、「本当に患者さんのためになっているのか?」「もしかして提供している私たちの独りよがりになっているのではないか?」という不安も、常に持ち続けています。

「患者さんのためになること」「患者さんの想い」―きっと、それは患者さんそれぞれの価値観によって異なるはず。しかしそれは、患者さんが持っている「想い」に触れる機会を積極的に持たなければ知ることができません。そしてその機会を得ることは、私たちにとって、とても価値ある出会いであると考えています。

私たちが続けている努力が独りよがりにならないよう、それぞれの患者さんの想いに、できる限り寄り添えるよう、私たちは毎年第三者機関による「患者満足度調査」を実施しています(QLife)。

今年は、田端駅前クリニックと東京新橋透析クリニックで同時調査を実施いたしました。

今回も本調査にご協力いただきました皆さま、誠にありがとうございました。

今回は、2施設を合計した結果(4項目5段階評価)を中心にレポートいたします。

数字が語ること、数字に学ぶこと

やや満足以上を「満足評価」とみますと、全3項目で90%を超える方々が満足しているという結果となりました。唯一「時間関連面」では90%を下回りましたが、それでも87%という高評価をいただくことができ、これはすべての項目で前回の調査を上回る結果となりました。

しかし、医師の対応面、スタッフの対応面において、前回は見られなかった「とても不満」の評価をいただいており、大きな反省の機会となりました。前回の調査からの1年間、研鑽を積んできたつもりではありますが、「まだまだ謙虚さが足らず慢心していたのではないか」という、さらなる内省の機会を与えてくれました。

具体的には、以下のようなお声、ご指摘です。

「患者のすぐ横でスタッフ同士が長々と私的な話をしていたことがありました。また、患者とスタッフで私的な話を大声で長々としていたこともありました。これは周りの患者にとって、ストレスになると思います」(60歳代、男性)

「透析室内で一部の患者との長話が過ぎて、非常に耳障り。」(56歳、男性)

その一方で、こんなご意見も。

「院長先生も穏和で話しやすく、スタッフの方々も明るく話しやすい。毎週3日間で1回4時間という時間を穏やかな気持で過ごせています」(55歳、男性)

「院長さんはじめ、医師の方々が質問などに対し丁寧に応えてくれ、受付、スタッフの対応も良いと思います」(65歳、男性)

私たちは、すべての患者さんに快適と安全を提供したい、すべての患者さんに満足を感じていただきたいと心から思い日々考え行動しています。それでも、患者さんお一人おひとりの感じ方はそれぞれに異なります。私たちが良かれと思い行動したことでも「他の患者さんの快適を奪っていることがあるかもしれない・・・」ということを心にとどめておかなければならない。そんなことを私たちに改めて深く考えさせてくださる結果でした。

「2016 年度患者満足度調査」の結果報告

「2016年度患者満足度調査」の結果報告
「2016年度患者満足度調査」の結果報告
◆属性ほか
調査期間 2016年11月1日~11月30日
回答者数 46名(男34、女3、不明1)
対象者数 113名
回答率 32.7%
回答方法 スマートフォン20名(男性19、女性1)、PC9名(男性9、女性0)、BOX投函17名(男性13、女性4)
◆評価内容
スタッフ対応面 看護師やスタッフの言葉づかい、態度、状況確認等
医師対応面 説明の明快さや信頼感、相談のしやすさ等
時間関連面 診察や会計の待ち時間、診察・治療時間の長さ
施設設備面 診察室の設備や雰囲気、待ち合いやトイレの快適さ等

なぜ、私たちが患者さんの声を大事にするのか?

この満足度調査も今回で4回目を迎えました。毎回感じることは、無記名であっても患者さんが私たちに正直な想いを伝えてくださることは、本当に勇気がいるということです。だからこそ、私たちはその患者さんの勇気と想いを真摯に、そして謙虚に受け止めなければならないと考えています。

「医療は人を介して提供されるサービス」

患者さんからの想いを受け取ること。すべてはそこから始まります。前回もお伝えしたことではありますが、「測定されないものは、決して改善されない」。この考えはこれからも変わることはありません。私たちはこの測定の結果を常に大事にしています。

今回の満足度調査でいただいた患者さんのご意見を受け、一つひとつ改善をしていきます。

ご協力をいただきました皆さんに心からお礼申し上げます。

Voice 読者の声

「汗」について埼玉県のY.Tさんより次の寄稿をいただきました。ありがとうございます。

非透析日は雨天を除き5~7千歩の散歩

私は人工透析導入6年目ですが、今まで透析日に水分を残したことは記憶にあるのは過去1回くらい、そして血液検査の結果表を見ても、リン、カリウムもすべて範囲内です。

「夏でも汗をかかない」という患者さんの声を耳にしますが、私は非透析日には、雨の日以外は往復5千歩から7千歩は散歩しています。夏は首にタオルを巻いて、家に帰ってきて体重計に乗ると200~300gは減っています。昨年から尿は出なくなりました。けれど、汗はちゃんと出ます。暑い夏、エアコンの効いた部屋で1日中過ごしたのでは、汗もかけない。近くの温泉に時々行って、湯の中で気のあった人と15~20分くらい話をしていると、汗びっしょりになってしまいます。浴場から出た後は、冷えたビールを飲んで爽快です。

また、料理に無関心だった私が今では趣味は惣菜づくりです。自分で作るものが透析患者には合っています。バランスの取れた食事、軽い運動、皮膚の管理が透析患者の使命と思っています。

編集部から

ご家族の笑顔は、「ファッション細胞」と名付けられるように本当に素晴らしいものです。鶴田さんはこの笑顔にも支えられつつ、さまざまな障壁を乗り越え挑戦を続けておられ、医療サービスのみならず経営の視点でも重要な示唆を得ることができました。何よりもチャレンジを続ける勇気をもらったような気がします。鶴田さんが主宰する「テンボ」についてはホームページをご参照ください。

「今さら聞けないFAQ」、みなさんの率直な疑問にお答えできましたでしょうか?ご質問ご意見がございましたらお寄せください。引き続きみなさんの素朴な疑問に答えていきたいと考えています。そのほか「Oasis Heart」へのご意見、ご要望などございましたら、合わせて下記田端駅前クリニックホームページ、ニューズレター、「Oasis Heartに対するアンケートはこちら」にお寄せください。

Oasis Heart 編集部 
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東京での夜間透析、臨時(旅行等)透析はアクセスのよい

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