田端駅前クリニック院長のブログ

Category Archives: 透析医療の質

間違いだらけの透析医療 長生きするためのリン?

 

人工透析の患者さんは、よくリンを減らすように言われると思い

ます。

おそらくあなたもそうだと思います。

なぜ減らす必要があるのでしょうか?

それは、リンが高いと長生きできないことがわかったからです。

heart shape form by various vegetables and fruits
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リンと体のすごい関係とは?

何故でしょうか?

そのメカニズムを今回お話ししたいと思います。

透析患者さんの血液中にリンが増加すると、

カルシウムと結合して体の色々な部位に沈着します。

このリンとカルシウムの結合体が、

様々な症状を引き起こすことになります。

Pills with calcio CA element Dietary supplements. Vitamin capsules. 3d
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皮膚では激しい痒みに悩まされたり(本当に嫌ですね)

関節の周囲では沈着したリン酸カルシウムの影響で

強い痛みを起こしたり、

関節の変形や腫脹などを引き起こします。

それだけではありません。

血管壁にもリン酸カルシウムが沈着し、

動脈硬化を増悪させ

心筋梗塞や脳血管障害を引き起こしたり、

手足の末梢循環障害による痛みやひどい時には、

壊死などをもたらします。

このようにリンが多いと、

皮膚や骨といった皮膚・筋骨格系だけではなく、

血管や心臓、脳血管といった部位にまで影響を与えます。

透析患者の死因の1位とは?

透析患者の死因の

1位は心不全、

4位が脳血管障害、

5位が心筋梗塞です。

透析を長く続けていると

心臓や脳血管障害による死亡率が上がります。

 

あまり知られていない長生きの秘訣とは?

これまでお話しした通り、

その原因が血清リンの上昇といわれております。

逆に言うと、

リンを低く抑えることができれば、

心血管系の病気にかかりにくくなり、

長生きすることができるわけです。

この事はわかっているようで以外と知られていないのです。

また、

高リン血症が持続すると後に副甲状腺機能亢進症となり、

副甲状腺ホルモンが骨を溶かすようになります。

すると骨から出たリンの影響で血中のリンはますます増加し

、ますます死亡のリスクが高まっていきます。

 

りんの真実、秘密のリン

リンの悪い面ばかりをお話ししましたが、

実はリンそのものは体なくてはならないもので、

細胞内にたくさん含まれています。

エネルギーを運搬したり、

カルシウムと共に骨を作る役割があります。

そして、蛋白質とリンは切っても切れない関係にあり、

ほとんど全ての蛋白質はおよそ1%のリンを含んでいる

と言われています。

体重50Kgの人が50gの蛋白質を食べると

約0.5g(500mg)のリンを摂取することになります。

roasting teppanyaki
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通常、食事中のリン含有量は1日1000~2000 mgであり、

その60%が腸から体内に吸収され、

吸収されなかったリンは便と一緒に排泄されます。

便の中には400mg程度のリンが含まれています。

毎日の少しの差が大きな差になる事実

つまり、

透析の患者さんは毎日便秘をしないように配慮することも

大切になります。

腎臓が正常であれば吸収されたリンは

全て尿から排泄されます。

しかし、週3回1回4時間の血液透析では1回に1000mg

しかリンを除去できず、

1日に換算すると400mg程度しか血液から

取り除くことができません。

 

リンはこのように食べ物から体の中に入ります。

一言で食べ物といってもリンを多く含む食べ物、

リンが少ない食べ物があります。

リンを多く含む食べ物には何があるでしょうか?

ひとつは先ほどお話ししたとおり、蛋白質を多く含む肉、

小魚、卵、乳製品、豆類です。

また、保存料としてリン酸を添加しているもの、

例えば魚肉加工品(かまぼこ、はんぺん、魚肉ソーセージ)

やインスタント食品、

ベーコン、ハム、ソーセージ、冷凍ハンバーグなどに

多く含まれています。

 

成功はあなたの手の中にある。

さて、これからが本題です。

あなたのアクションには2つ視点があります。

その第一は、リンを血液中に増やさない事です。

これはあなたがコントロール出来る事です。

医師やナースから食事制限を言い渡されるのは嫌ですよね。

医者の私でも嫌です。

しかしこう考えてはどうでしょうか。

実は、コントロールは自分の自由意志で可能だということです。

操縦桿を握っているのはあなたです。

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あなたがコントロールすることができるのです。

もしコントロールを失敗したら?

どうするかという疑問が残るかと思います。

心配いりません。余分なリンは薬を使って

除去することができます。

これが第二のアクションです・

また、前回もお話ししましたが透析時間を延ばし、

長時間透析を行うことで血液中のリンは減少します。

重要なポイントは、

あなたがコントロールできるということなのです。

しかも失敗もありです。

薬や透析はセーフティネットと考えてはどうでしょうか。

少し気持ちが楽になりませんか。

そしてあまりストイックになりすぎてもダメです。

肉や卵を全く食べないと良質な蛋白質が不足するので、

毎食バランスよくとることが大事です。

これ、いいと思いません。

あなたの自由意志で透析をより快適に

過ごしてはいかがでしょうか?

間違いだらけの透析医療ー成功する水分管理の方法とはー

水分の管理について

透析では水分の管理が重要とあなたも指摘されることが度々ある

と思います。

水やコーヒー、お茶といったものを制限することだけが

水分の管理だと勘違いされている方を多く見受けます。

ここで断言しますが、これは間違いです。

この点に関して、これからお話しましょう。

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実は、水分は重要ですが、水分と塩分の間には密接な関係があり

ます。

普通の人でも塩分を多くとると喉が渇き、水分を沢山摂取すると

塩分が欲しくなります。

これは、体が塩分(ナトリウム)濃度を一定に保とうと働くため

に起こります。

塩分をとれば、必然的に身体の塩分の濃度は高くなります。

それを、薄めて一定の濃度にするためには、外から水分を入れる

しか、方法はありません。

もう少し専門的に言うと、

ヒトの血液中ナトリウム濃度は140mEq/L前後に保たれており、

塩分を摂取すると血液中のナトリウム濃度が上がり、

水を飲んで薄めようという身体の機序が働きます。

これは、あなたの意思とは無関係です。

逆に水を沢山飲むと、血液中のナトリウム濃度が低下し、

塩辛いものが欲しくなります。

このような現象は血液中の塩分濃度を一定に保つために

人間の体が自然と行います。

したがってなかなか、我慢することができません。

このことから結果的に水分を制限するためには、

塩分摂取を控えることがその結果として水分摂取を抑制し、

水分制限になります。

ここが重要なポイントです。

 

塩分を制する者が水分を制す

1回の血液透析での除水量は体重の3~5%以内が理想とされております。

ここで少し計算してみましょう。

体重60㎏であれば透析間の増えが1.8~3.0㎏となります。

単純に計算すると、3㎏の体重増加は3リットルの体液増加を

表します。

血液のナトリウム濃度を140mEq/Lとすると、

増加したナトリウム量は、140mEq×3L=420mEqとなり、

塩分1gがナトリウム17mEqに相当するので、

420÷17=24gとなります。

これが3日間で起こったとすると、

1日当たり8.0gの塩分を摂取したことになります。

 

水分を調整するのではなく、塩分を調整する事が成功への道

言い換えれば、塩分を8.0g 摂取すると、

自分の意志とは関係なく

体の塩分濃度調整のために

体重が1㎏増えてしまうことになります。

このように増加する体重は塩分摂取量によって決まって

きてしまいます。

くりかえしますが、これはあなたの意思とは無関係です。

従って、体重増加が多い場合は、

塩分制限をしないとなかなか体重増加を

抑えることができません。

私たちが水分のみを制限するのは非常に苦痛で困難です。

ヒトは喉の渇きに合わせて水分を摂取するので、

喉の渇きを起こさないようにすることが大切です。

通常の人の1日の塩分摂取量の目安は10gとされておりますが、

透析患者さんの1日の塩分摂取量は6gと

厳しい制限がされています。

ラーメン1杯に含まれる塩分が約6gであり、

それだけで1日に必要な塩分を摂取してしまい、

体重増加につながります。

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このように水分をコントロールするには塩分を

うまくコントロールできれば、

それほど難しいことではありません。

つまり、塩分が成功の鍵という事なのです。

塩分を制して透析中の下肢つれや血圧低下からおさらばしましょう。

 

 

 

 

間違いだらけの透析医療 シャントを長持ちさせる秘訣とは

シャントとは何か?

今回は、血液透析にとって重要なシャントの話を

しましょう。

血液透析では週3回、1回4時間程度で体内に蓄積した

老廃物の除去を行わなければなりません。

効率的に透析で老廃物を血液から除去するためには、

大量の血液を取り出し、体外へ循環させる必要があります。

前回説明した血流量がそれに当たります。

通常、採血や点滴で使用する静脈からとれる血流量は

せいぜい数十ml程度です。

血液透析で体外に循環させる血流量は200~300ml/分であり、

これでは透析に必要な血流量を得ることはできません。

そのため内シャントと呼ばれる手術を行い、

動脈血が直接静脈に流れるようにします。

そうすることで、静脈には大量の血液が流入し、

血液透析が可能となります。

しかし、本来ない血液の通り道を人工的に作成しているので、

つまってしまうことがあります。

つまってしまうと、透析が出来なくなってしまいます。

シャントは患者さんにとって大変重要なものです。

シャントをどのように管理するか?

 

シャント内の血液は24時間常に流れており、

シャントのトラブルを早期に

発見し、閉塞するのを防ぐことが重要です。

シャント閉塞は様々な要因で突然起こりますが、

何らかの前兆を伴うことがあります。

比較的多いのが、狭窄を起こし、閉塞してしまうパターンです。

シャントが狭窄すると、音やスリル(手で触るとザーザーした感

触)に変化があります。

「見る」「触る」「聴く」が重要な理由

また、シャント感染を早期に発見するために、発赤や腫脹などの

感染兆候を見逃さないことも大切です。

このように、シャントの管理には

「見る」

「触る」

「聴く」

といった基本的なことが重要であり、

そのためには日頃から注意深くケアする必要があります。

日常の管理が大事

  • 1日1回はシャントの音、スリルを確認し、

ゴーゴーというシャント音がするか、

ザーザーというスリルが触れるかを確認してください。

  • シャント感染や出血を防ぐため、

透析日は入浴しないでください。

また、透析前はシャントの腕をきれいに洗いましょう。

  • シャントは圧迫しないでください。

シャントを圧迫すると、血液の流れが悪くなり、

閉塞することがあります。具体的には、

シャント肢で腕枕をしない、

腕時計をしない、

ハンドバッグや重い荷物を腕にかけない

(持つのは構いません)、血圧を測らないなどです。

シャントは上手に付き合っていけば、

10年以上トラブルなく経過することもあります。

御自分のシャントを日頃から観察し、

変化に気付くことが、シャントを長持ちさせる秘訣です。

間違いだらけの透析医療

第2回は血流量(QB)について

 

血流量(QB)とはシャントから血液ポンプを使って血液を取り出し、ダイアライザに流入させる血液の速度をいいます。

血流量は透析時間(前回、時間がながければ長いほど透析の効率が上がるいうことをお話しました)

と同様に、透析効率を上げるために重要な要素であります。血流量に比例して小分子尿毒素は除去されていきます。

 

長生きしている人の習慣

2009年の日本透析医学会の報告に血流量と生命予後を調査したものがあります。

少しむずかしいかもしれませんが、出来るだけ簡単にお話しますね。

血流量200ml/分を1とすると、血流量150未満では2.8倍も死亡リスクが高いことがわかります。

何と死亡リスク2.8倍ですよ

血流量と死亡リスク

 

血流量200ml/分に比べ300ml/分は40%以上も死亡リスクが低くなっております。

透析量や栄養因子で補正すると、血流量150未満では1.5倍、150以上180未満では1.2倍まで低下しますが、傾向は同じです。

昔からQBを上げると「心臓に負担がかる」、「血圧が低下する」と言われておりました。

これってあくまでも想像の産物ですね。

根拠を調べずに、直感的に言われてきたことがまことしやかに、常識のごとく定着してきたのです。

実は血流量が増えても問題はありません。

 

2013年の日本透析医学会における透析処方のガイドラインでは、

本邦の透析現場において血流量400〜500 ml/分程度では、アクセ

ス血流量の増加、心機能や血圧の急激な変化は認められておりま

せん。

ということは、これまで言われてきたことは根拠がないということになります。

実際、400〜450 ml/分以上の血流量を用いるhigh efficiency

dialysis でも死亡リスクの増加は認めておらず、またより多い血流

量で透析を行った海外の研究においても、高透析量群では心臓関

連死は増加しておりません。

健康な腎臓の血流量は約1000ml/分で内シャントの血流量は500〜

1000ml/分であることを考えれば、腎機能が廃絶した状態でのシ

ャント血流が循環器系に悪影響を及ぼすとは考えにくいです。

このように血流量増加による血圧低下や循環器系への負荷は今で

は迷信となっています。

 

幸せに、そして長生きしたいですか?

それでは、「血流量を増やしさえすればいいんじゃないの?」こ

んな疑問が出てきます。

しかし、血流量が多ければ多いほど効率が上がるという単純なものでもありません。

血流量を増やしたぶん、ダイアライザを大きな膜面積のものに変

更したり、血流量に見合う透析液流量(一般的には500ml/分の施

設が多いです)に上げなければ変化は少ないです。

患者さんの限られた治療時間を有効に活かしつつ、近年の高機能

ダイアライザの性能を充分に引き出すためには、血流量と透析液

流量の比率が1:2 程度が効果的であると言われておりますが、絶

対的な指標ではなく、個々に合わせた適切な血流量と透析液流量

の設定が望まれます。

難しいことは、さておき、重要なのは透析時間と血流量です。

この2つの要素を最適にすることで、何が起きるのでしょう?

冒頭にお話したとおり、あなたの死亡のリスクが減るのです。

これは画期的な事だと思いませんか?

毎日の透析で少しの工夫が大きな差になってきます。

毎日の透析の習慣が大きな差になってきます。

透析の時間が短く、血流量が低いと、透析が不十分となり死亡リ

スクを上げる事になります。

それを補うために、様々な薬剤を使用することになりますが、

かえって身体にダメージを与えることにもなりかねません。

重要なのは、充分な透析、最適な透析を行うことです。

日々の透析が極めて重要であることを理解していただければと思

います。

 

長時間透析について

こんにちは

院長の青木竜弥です。

 

透析医療に携わって10数年。

 

私なりに思っていることや感じていることを綴りたいと

 

思います。

 

第1回は透析時間について。

 

透析時間って気になりますよね。

できれば透析時間は短い方がいい。

多くの患者さんがそう考えていると思います。

 

しかし、それは間違いです。

 

最初から否定から入って

 

申し訳ありません。

 

2009年に日本透析医学会から出されたデータの中には、

 

透析時間と生命予後に関するものがあります。

 標準的な4時間透析している患者さんを1とすると、

3.5時間の患者さんでは1.2倍、3時間以下では2倍も

リスクが高いことが示されています。

逆に5時間以上では0.7倍とリスクが低くなっています。

死亡リスク

現在日本では4時間透析が一般的ですが、

5時間、6時間透析を実施している施設も増えてきております。

日本国内における透析患者の10年生存率は約36%で、

6時間以上の長時間透析を行っている施設の10年生存率は80%に

まで達するという報告もあります。
この他、たとえば長期合併症である透析アミロイドーシスの原因

となるβ2-MGなど分子量の大きい物質の除去は、

透析時間が最大の規定因子で、

時間をかけないと除去できません。

 

また、短時間透析では血管内老廃物の除去はできても、

組織間液や細胞内からの老廃物除去は十分ではありません。

組織間液や細胞内老廃物の除去には十分な時間

をかけることが大切です。

 

この他、

短時間透析では急激な体液量および溶質濃度の変化により、

急激な血圧低下や下肢つれなどが出現するリスクが増加します。

一方長時間透析では透析中の血圧低下や下肢つれ、

疲労感が軽減し、掻痒感や色素沈着などの悩みも解消します。

また、貧血の改善、血圧の安定、動脈硬化進行抑制、心不全予防

など沢山のメリットがあります。

十分な透析を行うことで、内服薬が減り、食事制限も緩やかにな

ることもポイントです。

 

このように長時間透析には様々な利点があります。

透析時間が長いのは確かに苦痛だと思います。

しかし、短時間の透析がリスクを高めることを考えると、

 

長時間透析をできるだけ苦痛を軽くする工夫が必要だと

考えています。

当院ではできるだけ患者さんの苦痛を軽減するように、新たな

取り組みを致しました。

長時間透析をできるだけ苦痛なく、過ごしていただける様に

取り組みをしています。

この取り組みにつきましては、また次回お話しします。