間違いだらけの透析医療


第2回は血流量(QB)について

 

血流量(QB)とはシャントから血液ポンプを使って血液を取り出し、ダイアライザに流入させる血液の速度をいいます。

血流量は透析時間(前回、時間がながければ長いほど透析の効率が上がるいうことをお話しました)

と同様に、透析効率を上げるために重要な要素であります。血流量に比例して小分子尿毒素は除去されていきます。

 

長生きしている人の習慣

2009年の日本透析医学会の報告に血流量と生命予後を調査したものがあります。

少しむずかしいかもしれませんが、出来るだけ簡単にお話しますね。

血流量200ml/分を1とすると、血流量150未満では2.8倍も死亡リスクが高いことがわかります。

何と死亡リスク2.8倍ですよ

血流量と死亡リスク

 

血流量200ml/分に比べ300ml/分は40%以上も死亡リスクが低くなっております。

透析量や栄養因子で補正すると、血流量150未満では1.5倍、150以上180未満では1.2倍まで低下しますが、傾向は同じです。

昔からQBを上げると「心臓に負担がかる」、「血圧が低下する」と言われておりました。

これってあくまでも想像の産物ですね。

根拠を調べずに、直感的に言われてきたことがまことしやかに、常識のごとく定着してきたのです。

実は血流量が増えても問題はありません。

 

2013年の日本透析医学会における透析処方のガイドラインでは、

本邦の透析現場において血流量400〜500 ml/分程度では、アクセ

ス血流量の増加、心機能や血圧の急激な変化は認められておりま

せん。

ということは、これまで言われてきたことは根拠がないということになります。

実際、400〜450 ml/分以上の血流量を用いるhigh efficiency

dialysis でも死亡リスクの増加は認めておらず、またより多い血流

量で透析を行った海外の研究においても、高透析量群では心臓関

連死は増加しておりません。

健康な腎臓の血流量は約1000ml/分で内シャントの血流量は500〜

1000ml/分であることを考えれば、腎機能が廃絶した状態でのシ

ャント血流が循環器系に悪影響を及ぼすとは考えにくいです。

このように血流量増加による血圧低下や循環器系への負荷は今で

は迷信となっています。

 

幸せに、そして長生きしたいですか?

それでは、「血流量を増やしさえすればいいんじゃないの?」こ

んな疑問が出てきます。

しかし、血流量が多ければ多いほど効率が上がるという単純なものでもありません。

血流量を増やしたぶん、ダイアライザを大きな膜面積のものに変

更したり、血流量に見合う透析液流量(一般的には500ml/分の施

設が多いです)に上げなければ変化は少ないです。

患者さんの限られた治療時間を有効に活かしつつ、近年の高機能

ダイアライザの性能を充分に引き出すためには、血流量と透析液

流量の比率が1:2 程度が効果的であると言われておりますが、絶

対的な指標ではなく、個々に合わせた適切な血流量と透析液流量

の設定が望まれます。

難しいことは、さておき、重要なのは透析時間と血流量です。

この2つの要素を最適にすることで、何が起きるのでしょう?

冒頭にお話したとおり、あなたの死亡のリスクが減るのです。

これは画期的な事だと思いませんか?

毎日の透析で少しの工夫が大きな差になってきます。

毎日の透析の習慣が大きな差になってきます。

透析の時間が短く、血流量が低いと、透析が不十分となり死亡リ

スクを上げる事になります。

それを補うために、様々な薬剤を使用することになりますが、

かえって身体にダメージを与えることにもなりかねません。

重要なのは、充分な透析、最適な透析を行うことです。

日々の透析が極めて重要であることを理解していただければと思

います。

 


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